備忘録

描く、書く、料理、雑記

『執拗反復』

 

四次元の海に

螺旋の音符が

ふわふわと降り注いで

新月の夜空みたいに

星がさんざめいて

重低音の声が

心地良く共振して

もう

ばらばらに

ばらけてしまいそう

 

手を繋ぐのは大好きだけど

セックスは苦手

人を好きになるのが好きで

割と誰の事も好きになれる

身勝手と言われても

最初に言ったでしょって

思うだけだから

同じ事を繰り返す

でも

ちゃんとさみしいよ

 

毎月送られてくる手紙

君はいつも便箋6枚

会っても言わないけど

何度も読み返してる

封筒から出して開く時の

紙がこすれる音が好き

何となく君のにおいがして

君の指の形を思い出す

真夜中の洗濯室で

駆動音を聴きながら

君の手紙を読む

 

待合室で眺める奇妙な絵

病院の壁の絵はたいてい

退屈な物か奇妙な物

でも

美術館でも同じかなって考えて

やっぱり美術館は違うなって

出掛けたくなる

輪切りの脳味噌写真を見た後も

待合室の絵を見ると

診察室での話を忘れてしまう

さっき、何て言われたんだっけ

 

四次元の裂け目に

噴き出す元素

染みわたる

透明な静けさ

2分40秒の黙祷

瞼の内側に

チカチカと明滅する

幾何学模様の電子信号

ずっと見つめていれば

拍動が重なって

暗転

ねぇ、あくびがしたい

 

ねじれた天井

狭い暗がりで

振動する音と光に

眩暈がするよ

水面が揺れて

ボートが大きく傾いた

水が少し跳ねる

ねぇ

なんで湖なのに、しょっぱいの?

知らなかったことがいっぱい

 

四次元の海にのまれて

クジラの骨が埋もれ重なる

海底の潮目

待ち合わせたけれど

半球睡眠で夢心地

奈落の静けさが音を吸う

螺旋の命が果てなく散らばって

ふわふわと陸へ向かう

見送るクジラの唄は

2分40秒

重低音の声が

心地良く共鳴して

もう

魂の裂け目が開いて

ばらばらに

ばらけてしまうよ

 

無数に彷徨う

ちぎれた螺旋のかけら

一万回きいて

ようやく聞き取れた

低く囁く様な声が

音と音の狭間を埋める

重力加速度を極めて

追いつくよ

温度は無いけどあたたかな

いつまでも呼んでくれる

四次元の声